高次脳機能障害で障害年金の申請をされる方へ その1

高次脳機能障害で障害年金の申請をされる方へ その1

今回は2回にわたりまして、高次脳機能障害で障害年金を申請される方へ向けて記事を書いてみます。高次脳機能障害は、精神症状が主になりますが、肢体の障害や言語機能の障害も見られますし、一般的に申請の手間がかかると思います。ご参考になれば幸いです。

まずは「障害認定基準」を確認しましょう

高次脳機能障害は、精神・肢体・言語機能と障害が多岐にわたります。そのため、障害認定基準もそれらを考慮する必要があります。まずは「精神の障害」の「B 症状性を含む器質性精神障害」から見ていきます。

また、症候性てんかんを併発されている場合も多いと思います。てんかんについては、当コラムの「てんかんで障害年金を申請される方へ」をご参照くださいませ。

B 症状性を含む器質性精神障害
(1)症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害をむものです。
 なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神および行動の障害(以下「精神作用物質使用による精神障害」といいます)についても、この項に含めます。
 また、症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。

⇒ 上記から、高次脳機能障害と症候性てんかんが併発している場合は、それらの症状を総合的に判断して認定される、こととなります。

(2)各等級等に該当すると認められるものを一部例示すると次のとおりです。
1級 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの
2級 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級 1 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの
   2 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの
障害手当金 認知障害のため、労働が制限を受けるもの

⇒ 他の精神疾患と同様で、大雑把に言いますと、常時の援助が必要な場合が1級、日常生活に大きく制限を受けるものが2級、労働に制限を受ける場合が3級になります。(大雑把すぎますが・・・。)

(3)脳の器質障害については、精神障害と神経障害を区分して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則として、それらの諸症状を総合して、全体像から総合的に判断して認定します。

(4)中略

(5)高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活または社会生活に制約があるものが認定の対象となります。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。
 なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションによる好転も見られることから療養および症状の経過を十分考慮します。
 また、失語の障害については、本章「第6 音声または言語機能の障害」の認定要領により認定します。

⇒ 上記に、高次脳機能障害の主な症状が列記されています。失語症や失認、記憶障害、注意障害、社会的行動機能障害のため、ご家族の援助が必要な方は大勢いらっしゃると思います。そのような点を病歴就労状況等申立書に記載しましょう。また、診断書を作成してもらう際にも、これらの症状で困っていることを具体的に伝えましょう。

(6)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能および精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めます。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断します。

⇒ 障害年金の原則? として、「社会的な適応性の程度」で認定するというものがあります。あくまでも症状の重症度ではなく、日常生活の困難度で判断されます。また仕事をされている場合でも「直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で」認定されます。そのため、認定しやすいように、病歴就労状況等申立書には具体的に援助内容等を記載し、診断書作成時にも主治医先生に具体的に伝えましょう。

「障害認定ガイドライン」で、もう少し詳しく見ていく

ここまで見てきても、いつも書いていることですが、ちょっと分かりづらい、読みづらい文章だと思います。

次に、やはり障害年金の認定で重要な「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を見てまいりましょう。

・ 障害認定基準に規定する「症状性を含む器質性精神障害」について総合評価を行う場合は、「精神障害」「知的障害」「発達障害」の区分にとらわれず、各分野の考慮すべき要素のうち、該当又は類似するものを考慮して、評価する。

⇒ 画一的ではなく、個別の症状を考慮した、柔軟な認定をする、とのことです。

・ 在宅での療養状況と考慮する。
・ 在宅で、家族や重度訪問介護等から常時援助を受けて療養している場合は、1級または2級の可能性を検討する。

⇒ 私がお手伝いしたケースは、ほとんどが在宅の方です。在宅で家族の援助を受けていらっしゃる方でも、十分障害等級1級または2級に該当する可能性があります。

・ 独居であっても、日常的に家族等の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合(現に家族等の援助や福祉サービスを受けていなくても、その必要がある状態の場合も含む)は、それらの支援の状況(または必要性)を踏まえて、2級の可能性を検討する。

⇒ 「福祉サービスを受けている」場合は、きちんと主治医先生にもお伝えし、診断書に記載してもらいましょう。また病歴就労状況等申立書にも記載しましょう。

・ 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。
・ 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。

⇒ 具体的で、認定の目安になるかと思います。

・ 安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。
・ 発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの状況を考慮する。
・ 精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する。
・ 仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。

⇒ 1年を超えて就労できていても、また発病後継続して就労していても、どのような援助・配慮を受けて働いているか? をきちんと申立てしましょう。なるべく具体的に、欠勤の頻度、早退・遅刻等の数字なども用いながら、申立書も作成しましょう。

診断書・病歴就労状況等申立書について

さて、ここまで細々とした決まり事を見てまいりました。

ここからは、診断書を書いていただく際の注意点、病歴就労状況等申立書作成の際の注意点を見ていきます。(他のコラムでも書いていますが。)

① 診断書を記入いただく際は、日常生活の様子について書面で伝える。

障害年金の診断書を書いていただく際、医師に日常生活の様子を書面でお伝えしましょう。

このコラムでも何度も書いていますが、「精神の障害用」診断書の裏面、「日常生活能力の程度」欄の各項目(適切な食事、身辺の清潔保持、通院と服薬などの7項目)について、その趣旨に沿った具体的なエピソードを、箇条書きでもいいですから書いてお渡しすることをお勧めします。

(弊事務所ではもうちょっと違った書面を作成していますが、せめて上記のような書類は作成しましょう。)

そうすれば、医師も日常生活が分かりますし、診断書作成の参考になると思います。ただ単に「年金が通るように書いて下さい」とお願いしても、お医者さんも困ると思いますし、このように書面でお伝えすることをお勧めします。


② 病歴就労状況等申立書の書き方

障害年金の申請で、一般の方に「負担感」があるのが病歴就労状況等申立書です。

「でも、診断書が一番大事だっていうし、診断書さえきちんと書いてあれば問題ないんじゃないの?」

と思われるかもしれません。しかし、そうはいかない。

実際、ご家族が申請されて一度不支給になった方で、弊事務所でお手伝いする際、以前の申請書類を拝見しましたところ、診断書の内容は「1級相当」でしたが不支給になった事がありました。

申立書を簡単に書いてしますと、残念な結果になる事もあるので手を抜かずに作成しましょう。

でも、どうやって作成するか? 分かりません。

といわれるでしょう。

その場合は、診断書作成の際に医師にお渡しした参考資料をもとに作成することをお勧めします。申立書は単に治療歴等を淡々と時系列で書くのではなく、「日常生活がいかに困難か?」といったことを中心に、発病後から現在までを時系列で書いていきます。障害年金は日常生活がうまく送れない方を支援するものですので、繰り返しになりますが、「日常生活で困っていること」を中心に書きましょう。

ここまでは高次脳機能障害の「精神の障害」を主に見てまいりました。次回は「言語機能の障害」「肢体の障害」についても見てまいります。お付き合いくださいまして、ありがとうございました。(社会保険労務士 海老澤亮)