大動脈解離・大動脈瘤で障害年金を申請される方へ

大動脈解離・大動脈瘤で障害年金を申請される方へ

今回は大動脈解離・大動脈瘤で障害年金を申請される方へ記事を書いてみます。大動脈解離で障害年金を申請される方は多いですが、他の傷病と違う点もありますので、そのような事もご紹介いたします。

まずは「障害認定基準」で確認しましょう

まず最初に、厚生労働省の「障害認定基準」を確認してみます。

心疾患による障害 ⑤大動脈疾患というところに大動脈解離・大動脈瘤について書かれています。通常は1級は○○、2級は○○…と書かれている訳ですが、実は3級についての基準のみが書かれています。

3級 1 胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入し、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

   2 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの

(注1) Stanford分類A型: 上行大動脈に解離があるもの。
     Stanford分類B型: 上行大動脈まで解離が及んでいないもの。
(注2) 大動脈瘤とは、大動脈の一部がのう状または紡錘状に拡張した状態で、先天性大動脈疾患や動脈硬化(アテローム硬化)、膠原病などが原因となります。これのみでは認定の対象とはなりませんが、原疾患の活動性や手術による合併症が見られる場合には、総合的に判断します。

⇒ 人工血管を挿入した場合は3級に該当する可能性があります。障害年金では通常、人工弁やペースメーカー、ICDを装着しますと、障害等級3級に該当します。しかし、人工血管の場合はそれだけでは3級と認められません。この点が大きな違いです。

⇒ 人工血管を挿入し、なおかつ「一般状態区分表」のイ又はウに該当した場合に3級に該当します。

 それでは、一般状態区分表とは何か? ということですが、下記の通りです。(これも認定基準より抜粋。)

ア 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

イ 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

ウ 歩行や身のまわりのことはできるが、時には少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

エ 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

オ 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

以上となります。

少なくとも上記の「イ」に該当しませんと、3級には該当しないこととなります。
それでは、その点を「誰がどう判断するのか?」ということですが、主治医先生に診断書を書いてもらう際に、診断書中に上記の記入欄があります。

では、イに該当するのは難しいか? ということですが、難しくないと思います。大動脈解離等で倒れて、その後人工血管を挿入して職場復帰されたとしますと、全く職場で配慮なく働くのは、難しいのではないでしょうか? まず勤務先が「倒れたことは考えず、今まで通りの仕事を、バリバリさせるぞ!」とはしないと思います。ご病気の再発が生命の危機につながりますので、会社も考えるでしょうし・・・。

という訳で、大動脈解離・大動脈瘤で人工血管を挿入した場合は、障害年金の診断書の一般状態区分表がポイントになります。


それでは、障害認定基準に戻ります。(注書きの続きから・・・。)

(注3) 胸部大動脈瘤には、胸腹部大動脈瘤も含まれます。
(注4) 難治性高血圧とは、塩分制限などの生活習慣の修正を行った上で、適切な薬剤3薬以上の降圧薬を適切な容量で継続投与しても、なお、収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上のものです。

⇒ 人工血管を挿入していない場合は、難治性高血圧を併発しているか? が3級に認定される要件となっていましたが、難治性高血圧の要件は上記の通りです。

(注5) 大動脈疾患では、特殊な例を除いて心不全を呈することはなく、また最近の医学の進歩はありますが、完全治ゆを望める疾患ではありません。従って、一般的には1・2級には該当しませんが、本傷病に関連した合併症(周辺臓器への圧迫症状など)の程度や手術の後遺症によっては、さらに上位等級に認定します。

⇒ 前に書きましたように、一般的には1・2級には該当しませんが、合併症や後遺症を考慮して1・2級に該当することもある、とのことです。(少なくとも日常生活上援助が必要な状態でないと2級には該当しないと思われます。)

● 大動脈瘤の定義:嚢状のものは大きさを問わず、紡錘状のものは、正常時(2.5~3cm)の1.5倍以上のものをいいます(2倍以上は手術が必要)。

● 人工血管にはステントグラフトも含まれます。



診断書作成時の注意点は?

診断書に関しては「循環器疾患の障害用」を医師に記入いただく必要があります。そちらの⑪欄の2が「一般状態区分表」です。必ず書いてもらいましょう。(書いてもらえたか、受領後すぐに確認しましょう。)

また診断書の裏面⑫欄に「4 大動脈疾患」記入欄があります。人工血管を挿入した場合はそちらがきちんと書かれているか? 確認しましょう。

そして「7 高血圧症」欄も、高血圧の場合は記入してもらいましょう。

(以下に日本年金機構のホームページ「循環器疾患の障害用の診断書を提出するとき」のリンクを貼ります。)

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todoke/shindansho/20140603.html

また、診断書作成時には、幣事務所では病歴就労状況等申立書を下書きし、それを参考資料として添付しています。日常生活を記載しておくことで、診断書作成の参考になると思います。

原則、障害等級3級なので障害厚生年金のみ請求可

ここで、大事なことを一つ書きます。

見出しの通り、人工血管を挿入した場合等で、障害等級は3級の認定となります。そのため、障害等級が1級または2級しかない障害基礎年金は請求できません。

あくまでも

初診日の時点で厚生年金の被保険者だった方のみ

障害年金が請求できます。ご注意くださいませ。

初診日・障害認定日について

また、初診日に関してですが、私見では、大動脈解離を発症して初めて受診した日(緊急搬送される方も多いでしょう。)が初診日になることが多いと思います。高血圧症の初診日等までさかのぼらないことが多いと思います。

障害認定日については、例えば緊急搬送されてそのまま人工血管を挿入したとしますと、人工血管を挿入した日が障害認定日になるでしょう。

障害認定日は通常初診日の1年6か月を経過した日とされていますが、場合によっては

初診日=障害認定日

になると思います。この点は他の疾患とは大きく異なる点です。障害年金の受給対象と知らずに手術からずいぶん時間が経ってしまった・・・という方も、さかのぼっての障害年金申請をお勧めします。

今回は大動脈解離・大動脈瘤で障害年金を申請される方へ向けて記事を書いてみました。人工血管を挿入した場合は、障害認定日が通常より早まることが多いので、その点ご注意くださいませ。ご参考になれば幸いです。ありがとうございます。(社会保険労務士 海老澤亮)