統合失調症で障害年金の申請をされる方へ

今回は統合失調症で障害年金の申請を考えていらっしゃる方へ向けて、書いてみようと思います。このご病気に関しては、苦しんでいらっしゃる患者さん、そしてご家族の方と接し、思い入れのあるご病気であります。

うつ病と並んで、統合失調症の申請も多く経験させていただきました。その中で、多くの方がご家族を思い、大変苦労されています。特に、このご病気で苦しんでいらっしゃる方は、「いい人」が多いと感じています。気遣いのできる方、優しい方が多い。そんなあなたのご苦労が少しでも減れば・・・と思い書いてみますね。(前置きが長くなりました。)

まずは「障害認定基準」で確認する

今回もいつも同様、まずは「障害認定基準」から確認してまいりましょう。(面倒な場合は、太字の部分だけお読みください。)

(1)

1級 統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの

2級 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの

⇒ 1級~3級に関して、言い回しはほぼ同様ですが、1級だと「高度の」というような表現が多いです。大雑把に言って、統合失調症による人格変化、思考障害、異常体験のため、常時日常生活に援助が必要な状態が1級、日常生活に大きな制限を受けている状態が2級、労働に制限を受けていると3級となります。

(2)
ア 統合失調症は、予後不良の場合もあり、国年令別表・厚年令別表第1に定める障害の状態に該当すると認められるものが多く見られます。しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、また、その反面急激に増悪し、その状態を持続することもあります。したがって、統合失調症として認定を行うものに対しては、発病後からの療養および症状の経過を十分考慮します。

⇒ ご病気の性質上、短期的な症状の変化だけでは認定しない、とされています。そのため、申請の際もご病気になられてからの流れをきちんと申し立てる必要があります。

(3)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能および精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めます。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断します。

⇒ 「仕事をしていると障害年金をもらえない」という事はありません。ただ、仕事をする上で支障があることを具体的に申立てする必要はあります。上記にあるように「 仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等」を病歴就労状況等申立書に書く、診断書を記入いただく際に主治医先生に伝える必要があります。



「障害認定ガイドライン」で、もう少し詳しく見ていく

ここまで見てきても、いつも書いていることですが、ちょっと分かりづらい、読みづらい文章だと思います。

次に、やはり障害年金の認定で重要な「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を見てまいりましょう。

・ 統合失調症については、療養及び症状の経過(発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況)や予後の見通しを考慮する。

⇒ これはうつ病に関するコラムでも書きましたが、最近1年程度の病状の変動や「予後」についても認定の材料とされています。

・ 統合失調症については、妄想・幻覚などの異常体験や、自閉・感情の平板化・意欲の減退などの陰性症状(残遺状態)の有無を考慮する。
・ 陰性症状(残遺状態)が長期間持続し、自己管理能力や社会的役割遂行能力に著しい制限が認められれば、1級または2級の可能性を検討する。

⇒ 統合失調症で障害年金を申請される多くの方に陰性症状(残遺状態)が現れています。陽性症状は落ち着いていて、一見すると症状が安定しているようにも見えます。しかし、意欲の減退等が著明で日常生活を送るのが困難であり、多くの方が障害年金を受給されています。

・ 入院時の状況(入院期間、院内での病状の経過、入院の理由など)を考慮する。
・ 病棟内で、本人の安全確保などのために、常時個別の援助が継続して必要な場合は、1級の可能性を検討する。

⇒ 統合失調症で障害等級1級に該当するのは、正直申しまして滅多にないと思います。長期入院していて、本人の安全確保のため常時援助が必要な状態にあれば1級を検討する、とのことですが、まさに最重度の状態だと思います。

・ 在宅での療養状況と考慮する。
・ 在宅で、家族や重度訪問介護等から常時援助を受けて療養している場合は、1級または2級の可能性を検討する。

⇒ 私がお手伝いしたケースは、ほとんどが在宅の方です。在宅で家族の援助を受けていらっしゃる方は、十分障害等級2級に該当する可能性があります。

・ 独居であっても、日常的に家族等の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合(現に家族等の援助や福祉サービスを受けていなくても、その必要がある状態の場合も含む)は、それらの支援の状況(または必要性)を踏まえて、2級の可能性を検討する。

⇒ 「福祉サービスを受けている」場合は、きちんと主治医先生にもお伝えし、診断書に記載してもらいましょう。また病歴就労状況等申立書にも記載しましょう。

・ 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。
・ 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。


⇒ 具体的で、認定の目安になるかと思います。

・ 安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。
・ 発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの状況を考慮する。
・ 精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する。
・ 仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。

⇒ 1年を超えて就労できていても、また発病後継続して就労していても、どのような援助・配慮を受けて働いているか? をきちんと申立てしましょう。なるべく具体的に、欠勤の頻度、早退・遅刻等の数字なども用いながら、申立書も作成しましょう。


診断書・病歴就労状況等申立書について

さて、ここまで細々とした決まり事を見てまいりました。

ここからは、診断書を書いていただく際の注意点、病歴就労状況等申立書作成の際の注意点を見ていきます。(他のコラムでも書いていますが。)

① 診断書を記入いただく際は、日常生活の様子について書面で伝える。

障害年金の診断書を書いていただく際、医師に日常生活の様子を書面でお伝えしましょう。

このコラムでも何度も書いていますが、「精神の障害用」診断書の裏面、「日常生活能力の程度」欄の各項目(適切な食事、身辺の清潔保持、通院と服薬などの7項目)について、その趣旨に沿った具体的なエピソードを、箇条書きでもいいですから書いてお渡しすることをお勧めします。

(弊事務所ではもうちょっと違った書面を作成していますが、せめて上記のような書類は作成しましょう。)

そうすれば、医師も日常生活が分かりますし、診断書作成の参考になると思います。ただ単に「年金が通るように書いて下さい」とお願いしても、お医者さんも困ると思いますし、このように書面でお伝えすることをお勧めします。


② 病歴就労状況等申立書の書き方

障害年金の申請で、一般の方に「負担感」があるのが病歴就労状況等申立書です。

「でも、診断書が一番大事だっていうし、診断書さえきちんと書いてあれば問題ないんじゃないの?」

と思われるかもしれません。しかし、そうはいかない。

実際、ご家族が申請されて一度不支給になった方で、弊事務所でお手伝いする際、以前の申請書類を拝見しましたところ、診断書の内容は「1級相当」でしたが不支給になった事がありました。

申立書を簡単に書いてしますと、残念な結果になる事もあるので手を抜かずに作成しましょう。

でも、どうやって作成するか? 分かりません。

といわれるでしょう。

その場合は、診断書作成の際に医師にお渡しした参考資料をもとに作成することをお勧めします。申立書は単に治療歴等を淡々と時系列で書くのではなく、「日常生活がいかに困難か?」といったことを中心に、発病後から現在までを時系列で書いていきます。障害年金は日常生活がうまく送れない方を支援するものですので、繰り返しになりますが、「日常生活で困っていること」を中心に書きましょう。

初診日について

また、障害年金の申請では「初診日」はとても重要です。(他でも書いていますが。)

最初に具合が悪くなって医療機関を受診した際、例えば「適応障害」「不安神経症」「うつ状態」などと診断されたら、初診日はどうなるのか?

基本的な考え方としては、例えば「適応障害」「不安神経症」「うつ病」などと診断された 場合でも、最初に医療機関を受診した日が初診日になるでしょう。

その場合、受診状況等証明書には「適応障害」「不安神経症」「うつ病」などと「統合失調症」とは違う病名が書かれるかと思います。しかし、それでいいと思います。

その他、元々「知的障害」「発達障害」を発症されている方に関しては、「前発疾患の病態として出現している場合は同一疾患」という難しい扱いになります。この辺りは主治医先生に見解を伺って慎重に手続きを進める必要があります。

ただし、(以下は厚生労働省の疑義照会回答からの引用です。前段の補足として。)

発達障害や知的障害である者に後から統合失調症が発症することは、極めて少ないとされていることから原則「別疾病」とする。
ただし、「同一疾病」と考えられるケースとしては、発達障害や知的障害の症状の中には、稀に統合失調症の様態を呈すものもあり、このような症状があると作成医が統合失調症の診断名を発達障害や知的障害の傷病名に付してくることがある。したがって、このような場合は、「同一疾病」とする。

相当因果関係があるかどうかは素人には分かりませんので、お医者さんの意見を聞きながら柔軟に対応する方がいいでしょう。

今回も長文になってしまいました。

ご病気を背負って生きていられる患者さん、その患者さんの援助をする家族。大変なご病気だと感じることもあります。ご病気は「誰のせい」というものではありませんので、なるべく障害年金の制度をご活用いただければと思います。(社会保険労務士 海老澤亮)