発達障害で障害年金の申請をされる方へ

発達障害で障害年金の申請をされる方へ

今回は発達障害で障害年金の申請をされる方への記事です。何かのお役に立てれば幸いです。

まずは「障害認定基準」の確認から

障害年金の認定をする際の基準である「障害認定基準」から見ていきましょう。(以下、抜粋です。⇒ ただし、途中でコメント? を記入しています。

E 発達障害
(1)発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものをいいます。

⇒ 発達障害について定義しています。

(2)発達障害については、たとえ知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために、日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行います。
 また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。

⇒ ここで重要なのが「知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために、日常生活に著しい制限を受けることに着目」ということです。あくまでも障害年金とは「日常生活の困難度」を認定するものと考えてください。

⇒ 発達障害とともに、うつ病等の精神疾患を併発しているときは、別途審査する訳ではなく、それら複数の疾患を総合考慮して、認定します。もし、併発している場合は、診断書にその旨を記載してもらい、発達障害のみならず他疾患についても十分に記入してもらって下さい。同様に、病歴就労状況等申立書にも記載しましょう。

(3)発達障害は、通常低年齢で発症する疾患ですが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とします。

⇒ 知的障害の場合は、初診日は「生年月日」になります。(そのため、受診状況等証明書も不要です。)しかしながら、発達障害の場合、初診日はあくまでも原則通り「初めて受診した日」になります。(受診状況等証明書も必要です。)ただ、知的障害と発達障害を併発している場合は、初診日は生まれた日になります。そのため、発達障害の方で障害厚生年金を請求される方も少なくありません。




(4)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりです。

1級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの

2級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの

3級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

⇒ 大雑把に言って、日常生活に常時援助が必要な方が1級、日常生活で援助が必要な方が2級、仕事をする上で援助を必要とする方が3級と言えるでしょうか。

(5)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能および精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めます。

(6)就労支援施設や小規模作業所などに参加するものに限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事しています。
 したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断します。

⇒ 仕事をしていると障害年金がもらえない、という事はありません。現に私が申請された方でもフルタイムで就労していて、障害厚生年金2級を受給されている方もいらっしゃいます。普段、仕事上で受けている援助、待遇等を具体的に認定する側にお伝えする必要はありますが、その点は考慮してもらえます。

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」から、気になる点をチェック

長い引用でしたが、障害認定基準を見てまいりました。疲れましたでしょうか?

次に、同じように「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」から抜粋しまして、確認していきましょう。

・ 臭気、光、音、気温などの感覚過敏があり、日常生活に制限が認められれば、それを考慮する。

⇒ これは発達障害の方に特有の症状ですが、申請の際にはこのような細かな点もきちんと申し立てましょう。

・ 在宅で、家族や重度訪問介護等から常時個別の援助を受けている場合は、1級または2級の可能性を検討する。
・ 入所施設において、常時個別の援助が必要な場合は、1級の可能性を検討する。
・ 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。
・ 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。

⇒ 具体的で、認定の目安になるかと思います。

・ 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。
・ 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、 執着が強く、臨機応変な対応が困難であることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。
・  一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。

⇒ 一般企業に勤めている場合の具体的な目安が書かれています。

発達障害については、認定基準が具体的に、細かく定められていると思います。以前と比べ、認定環境が整備されています。

その他の注意点

長々と認定基準等を見てまいりました。

それでは、他の注意点をご紹介します。

① 診断書を記入いただく際は、日常生活の様子について書面で伝える。

障害年金の診断書を書いていただく際、医師に日常生活の様子を書面でお伝えしましょう。

このコラムでも何度も書いていますが、「精神の障害用」診断書の裏面、「日常生活能力の程度」欄の各項目(適切な食事、身辺の清潔保持、通院と服薬などの7項目)について、その趣旨に沿った具体的なエピソードを、箇条書きでもいいですから書いてお渡しすることをお勧めします。

(弊事務所ではもうちょっと違った書面を作成していますが、せめて上記のような書類は作成しましょう。)

そうすれば、医師も日常生活が分かりますし、診断書作成の参考になると思います。ただ単に「年金が通るように書いて下さい」とお願いしても、お医者さんも困ると思いますし、このように書面でお伝えすることをお勧めします。

② 病歴就労状況等申立書の書き方

障害年金の申請で、一般の方に「負担感」があるのが病歴就労状況等申立書です。

「でも、診断書が一番大事だっていうし、診断書さえきちんと書いてあれば問題ないんじゃないの?」

と思われるかもしれません。しかし、そうはいかない。

実際、ご家族が申請されて一度不支給になった方で、弊事務所でお手伝いする際、以前の申請書類を拝見しましたところ、診断書の内容は「1級相当」でしたが不支給になった事がありました。

申立書を簡単に書いてしますと、残念な結果になる事もあるので手を抜かずに作成しましょう。

でも、どうやって作成するか? 分かりません。

といわれるでしょう。

その場合は、診断書作成の際に医師にお渡しした参考資料をもとに作成することをお勧めします。申立書は単に治療歴等を淡々と時系列で書くのではなく、「日常生活がいかに困難か?」といったことを中心に、出生後から現在までを時系列で書いていきます。障害年金は日常生活がうまく送れない方を支援するものですので、繰り返しになりますが、「日常生活で困っていること」を中心に書きましょう。

発達障害について、長々と書いてきました。最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。少しでもお役にたてれば幸いです。(社会保険労務士 海老澤亮)

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